
Prologue
「Begin」
―—遠い未来。
人と機械と、そしてもう1つの種族がいる街があった。
ここがその、はじまりの場所。

「おいエド起きろよ、緊急事態だ」
突然の着信に起こされる。眠気眼に昨日の作業の残骸と仮想スクリーンが映る。
少しの休息をとるつもりが、どうやら寝落ちていたようだ。
「お宝が手に入ったんだ、格安で売ってやるからとっとと来やがれ」
「ああ、5分で行く」

第1軌道エレベーター・ユグドラシル、ここはその基部にある海上都市『アースガルド』。
5つの区画と3つの階層に分かれている構造をしていて、最下層のここは基本的に物好きしかこない場所だ。
しかし、今年は4年に1回開催されるマシンダイビングという大会のおかげで賑わいを見せている。
「裏路地の赤い看板が目印、と」

――マシンダイビング。
それは高度2000kmからスカイダイビングする競技。
時速1500kmを優に超えるハイスピードレースでもあり競技者は自身の保護のためマシンを装備する。
競技の名前の由来はそれだ。
危険だが優勝者はどんな願いでもひとつ叶えられる。
そんな景品を吊るされて挑まない奴はいないだろう。
「さて、何の用だか……」

裏路地の奥、目的地のジャンク屋に到着する。
「遅ぇぞエド。尻が錆び付くかと思ったぜ」
「時間通りだフライズ。で、それがお宝か?」
フライズは首を縦に振るとスペック表を手渡す。
お宝は金属製の箱だった。
受け取った資料に目を通すと、エリザベス型シンカーと表記されている。
他には未起動だが残寿命が1年、など。
色々と気がかりだが、ここにあるモノにしては上々だ。
「大事にしろよ、アンタの相棒だ」

出世払いを約束させられ不貞腐れるフライズを後に帰宅し、シンカーの意識を目覚めさせる。
人格や性格など初期入力されているものの、それ以外は当然記憶がないのだから色々と教えないといけない。
日々の意思疎通も必要となる。面倒だが、仕方ないものは仕方ないと割り切る。
とりあえずエリザベス型だから名前は……。
「お前はライザだ」

「……わかったけど、私は何者なの?」
「俺はお前が何者なのかは知らない」
不安げに周囲を観察するライザの脇を通り抜け部屋の奥へと歩を進める。
「……私は、何をしたらいい?」
「俺の望みは俺が創った機体が世界一速い事を証明すること、お前は、」
立ち入り禁止テープが張られた暗幕に手をかける。
「こいつで自分の願いを掴め」
